肩関節・上肢の痛みに関する主な疾患名
肩関節周囲炎(五十肩)(かたかんせつしゅういえん)
病態:肩関節は関節包という袋に包まれています。関節の中で炎症が起こるとその炎症が袋全体に波及してその袋が硬くなります。関節包の内側には神経が豊富な滑膜という組織ですので痛みも感じやすいです。関節包に波及した炎症は3か月から6か月以上にわたって痛みをもたらすことがあります。この炎症の元は、腱板という筋肉や肩峰下滑液包すり切れた結果起こるものです。症状:じっとしていても肩関節に痛みを感じることがあります。安静時の痛みが軽い場合でも動かすことで強い痛みが出現します。通常、90度以上腕を上げることができません。痛みの特徴は夜間痛であり、重症例では肩甲骨周りや肘関節、前腕部まで痛みを感じることがあります。
腱板炎(けんばんえん)
病態:肩関節は肩甲骨と上腕骨の連結部分です。この連結をしっかりと止めるための筋肉として腱板があります。この腱板は4つの筋肉から構成されます。そのうちに一つに棘上筋があります。棘上筋はトンネルの中を出入りするような環境で働くのでそこで炎症が起こりやすいです。野球の投球動作でもこの部分が痛みやすいですが40歳ぐらいから経年劣化としての痛みが出ることが多いです。
症状:肩関節は十分に動きますが、ある一定の角度でズキッっと鋭い痛みを感じます。
上腕骨外側上顆炎(肘の使い痛み)(じょうわんこつがいそくじょうかえん)
病態:指を伸ばす筋肉や手首を手の甲側に伸ばす筋肉は肘関節の外側(上腕骨外側上顆)に付いています。重たい荷物を持ち上げたり、繰り返しの手仕事によってこの部分に付いている上記の筋肉の付着部に負担がかかり炎症が起こります。
症状:何気ない手を使う作業や手首を固める動作(重たいものを持ち上げるなど)で肘関節の外側に鋭い痛みを感じます。重症例では腕の外側の筋肉に鈍痛を感じます。
手根管症候群(しゅこんかんしょうこうぐん)
病態:手首の付け根はトンネル上になっており、そこには腱や腱鞘、神経、血管が走っています。このトンネルの中に通る正中神経が何らかの原因で圧迫を受けた際に、手根管症候群が発症します。
症状:初期には親指や人差し指、中指の先がしびれます。時には就寝時に痛みとしびれを感じて、手を振ると軽減することがあります。中期から末期になると、親指の付け根の筋肉が痩せてきて、親指をうまく動かすことができなかったり、箸をうまく使えなかったり、細かい作業が困難になってきます。
手首・指の腱鞘炎(使い痛み・ばね指)(けんしょうえん)
病態:手首周辺や手には「腱鞘(けんしょう)」とよばれる組織がたくさんあります。腱鞘の中には腱が走ります。手を頻繁に使用する作業が続くと、腱と腱鞘の間に摩擦が起こり、痛みが出ます。これが腱鞘炎です。
症状:痛みの出やすい部位はおおかた決まっています。手のひらのすべての指の第3関節(親指は第2関節)の少し下、手首の親指側と小指側です。指の腱鞘炎では指が動かなくなり、無理に動かすと「ゴキン」という音と共に激痛が走ります。この現象をばね現象とよび、このような指の痛みを「ばね指」とよびます。また、痛みは少なく音だけが鳴るときもあります。朝に痛みが強い傾向にあります。
上肢の変形性関節症(CM関節症・ヘバーデン結節・部シャール結節)(じょうしのへんけいせいかんせつしょう)
病態:どの関節も歳を重ねるごとに軟骨はすり減り、その過程で炎症を起こし痛みを感じることがあります。上肢の関節は体重がかからないので、下肢と比べて問題は比較的に少ないですが、痛みが出ることもあります。炎症が起きやすいのは鎖骨と肩甲骨の間の肩鎖関節、肘関節、親指の第2関節のさらに下(手首にちかいところ)の関節であるCM関節(CM関節症)、指の第1関節と第2関節です。特に第1関節の変形はヘバーデン結節、第2関節の変形はブシャール結節とよばれます。これらはリウマチの初期症状とよく間違えられますが、まったく別のものです。手首にも変形性関節症がありますが、多くは過去の怪我が原因で起こります。
症状:どの関節も動かすと痛みがあります。特に動かしはじめが痛く、動いているうちに痛みは小さくなってきます。痛みの程度は日常生活に支障をきたす程度から、なんとなく痛い程度まで様々です。肘の関節の変形では、前腕から手にかけての内側にしびれや感覚の異常、握力低下などの神経症状が出現することがあります(尺骨神経損傷)。