首・肩・背中の痛みに関する主な疾患名
頚椎椎間板症(けいついついかんばん)
病態:頚椎と頚椎の間には「椎間板」という軟骨があります。頭の重みによって椎間板は20歳以降、変性していきます。この過程で痛みを感じることがあります。喫煙者の方は椎間板の血流量が減るために変性は早いといわれています。
症状:首を前後左右に動かす時に痛みを感じます。また、椎間板の痛みが筋肉を緊張させて首や肩、肩甲骨の内側に重くだるい痛みを感じます。時に頭痛を感じることもあります。
急性頚部痛(寝ちがい)(きゅうせいけいぶつう)
病態:原因はよくわかっていません。頚椎に変形がないにもかかわらず突然やってくる急性の痛みが起こる状態です。
症状:突然に、または徐々に首の痛みに気付きます。痛みは鋭く、首を動かすことができないほどです。そのために、向きを変える際には体を動かすという、特有の動きになります。朝起きた際に痛みを覚えることもあるので、「寝ちがい」と表現されることもあります。首や肩・肩甲骨周辺の筋肉は痛みのために緊張して、重くだるい痛みを感じます。
頸椎症(けいついしょう)
病態:頚椎椎間板症が更に進行して頚椎が変形することによって様々な痛みが出現すると考えられています。レントゲン検査で頚椎の変形が認められ、首に何らかの痛みがある場合に頸椎症と診断されます。
症状:痛みの特徴は起床時などの動き始めに鋭い痛みを感じ、動いているうちに痛みが小さくなってくることです。この痛みは数日から数週間続くこともあります。慢性期に移行すると、首や肩・肩甲骨周辺の筋肉は痛みのために緊張して、重くだるい痛みを感じます。
頸椎症性神経根炎(けいしょうせいしんけいこんしょう)
病態:頚椎症によって生じた変形が上肢へ行く神経を圧迫することで起こります。
症状:背中や肩、上腕部・前腕部・手指にかけて痛みやしびれを感じます。重症の場合は首を動かすことで肩甲骨や肩、腕の方に電撃が走るような痛みを感じることがあります。また手を頭の上にのせるような姿勢によって首の痛みが軽減することがあります。慢性期に移行すると、首や肩・肩甲骨周辺の筋肉は痛みのために緊張して、重くだるい痛みを感じます。腕の方にも同様の痛みを感じます。
頚椎椎間板ヘルニア(けいついついかんばんへるにあ)
病態:椎間板はバームクーヘンのような構造をしており、真ん中には髄核という流動性の組織があります。バームクーヘンに相当するのは繊維輪と呼ばれる組織です。繊維輪は経年劣化のために放射状に亀裂が入り、その亀裂を伝って髄核が外に飛び出てしまいます。この飛び出した状態のことをヘルニアといいます。
症状:飛び出た髄核は上肢へ行く神経を圧迫しますので、首や肩、肩甲骨周辺と腕にかけて激しい痛みや時には脱力が感じられます。
頚髄症(けいずいしょう)
病態:頸椎症の変形が進行して、脊柱管が狭くなってしまうことで脊髄が圧迫されてしまうことにより起こります。
症状:頸椎症性神経根炎と異なるのは、頚髄が圧迫されることです。これにより、両手・両足にしびれを感じます。また、ふらつきを感じることもあります。特に両手のしびれと脱力、箸が使いにくいことやボタンをかけることができないなど細かい動作がしにくくなります。症状が進行すると手術が必要になります。
胸郭出口症候群(きょうかくでぐちしょうこうぐん)
病態:首から腕に向かう神経の通り道で首から胸のあたりまでの範囲を胸郭出口といいます。この範囲には腕に行く神経が圧迫される場所が4カ所あるとされます。多くは筋肉によって神経が圧迫されるのですが、それにはなで肩や鳩胸などの姿勢や体型が関係しています。
症状:重たいものを持つと腕がしびれる(牽引型)や腕を上の方に上げると手がしびれてくる(圧迫型)などの症状があります。やはり慢性期に移行してくると、首や肩・肩甲骨周辺の筋肉が緊張して、重くだるい痛みを感じます。
上記以外の痛み
上記の疾患が確認でないにもかかわらず、首・肩・肩甲骨・腕に出てくる痛みは一括して頸肩腕症候群といわれることがあります。また、日常生活での過度のストレスは痛みを感じやすい状態をつくりあげますのでこのことも首や肩甲骨周りから背中の痛みの原因になると考えられています。
症状:首や肩・肩甲骨周辺の筋肉が緊張して、重くだるい痛みを感じます。時にはこれらの痛みが引き金になって頭痛を感じる事もあります。