
膝の痛みに悩まされる方は多くいらっしゃいますが、そのほとんどは老化による痛みです。そして老化は誰にもやって来るものです。したがって、老化による膝の痛み(変形性膝関節症)は痛みの出る年齢や痛みの程度などの個人差はありますが、だれにでも起こりうるものです。この痛みについての知識をつけることは、やみ雲に痛みを大きく感じないために必要なことだと思います。そのような観点から老化による膝の痛み(変形性膝関節症)についてご説明します。
関節は骨と骨の結合部分であり、この部分で体の動きを作ります。膝関節の場合は太ももの骨(大腿骨)とスネの骨(脛骨)により関節はできています。関節は関節胞という膜で袋状になっており、中は関節腔とよばれ密閉空間になっています。その中は潤滑液の働きをする関節液と言う液体で満たされ、関節の接触面は軟骨になっています。これらの構造により、関節は極力磨耗することを抑えているのですが、それでも磨耗してきます。磨耗した軟骨はその磨耗片(ちびりかす)が関節の袋の内側にある神経を刺激して膝の痛みとして感じるのです。(図1)特有の症状は(表1)の通りです。

図1 |

実物写真(軟骨の磨耗を示す) |
| 1.膝の内側に痛みがある |
| 2.膝の内側を押さえると痛みがある |
| 3.動作開始時(朝、起床時の立ち上がり動作やイスから立ち上がる時) |
| 4.階段の上り下り(特に降りる時) |
| 5.歩行時の痛み |
| 表1 |

関節の軟骨は年齢と共にだんだんちびっていく事は先ほどお話しました。体は年齢と共に老化していくものです。例えば肌は30歳を過ぎてくると「しわ」がよってきます。これは老化によって細胞の水分や細胞そのものの数がだんだん少なくなってくる事が原因です。肌は普段から鏡などで見る事がありますので、その老化の過程を確認する事ができて、老化に対して納得をすることもできます。しかし、関節の中は肌のように毎日見ているわけではありませんので、いきなり痛みが出てきて、「関節の軟骨がちびっている」と言われても肌のしわのように納得はいかないものです。
痛みの原因となっている関節軟骨の磨耗(ちびり)は老化が原因ですので肌のしわ同様、治る事はありません。しかし、この現象は老化であり、生きている以上は当たり前のことなのです。これを根本的に治すということは若返るということに他なりません。関節軟骨を若返らす事は無理ですが、その痛みを感じないようにすることはできます。それらが、整骨院、整形外科などで行なわれている低周波治療、温熱療法や、鍼灸治療です。また、これらの痛みは周期があり、痛い時期と楽な時期を繰りかえします。その痛みの波の大きさを決めるのは、生活背景(膝をよく使うような事をしたとか昨日正座を長時間したとか)に関係することもありますし、何もしないのに痛くなってきたという事もあります。いわば、無作為にやってくるのです。痛みに対する治療はこれらの痛みの波をいかに小さくする事かということになります。(図2)
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図2
痛みの波は無作為にやってくる |

老化による膝の痛みは疫学調査にてその危険因子が示されています。危険因子とは「このような人が変形性膝関節症になりやすいですよ」という因子です。その危険因子の一つに肥満が挙げられます。(文献1)また、ダイエットによって症状が改善したという報告もあります。(文献2)体を支えるのは2本の足に他ならないのですが、その体重を膝はいつも支える訳です。そうなると、体重が重たいほど膝の軟骨に負担が大きいことは明らかなことです。ということで膝の軟骨をなるべく温存するための積極的な方法のひとつに体重を増やさないというものがあります。
しかし、皆さんは漠然と「体重を減らしなさい」とお医者さんに言われてもどのようにしてよいか分かりませんよね。
体重のコントロールの方法は「ダイエット」のところで説明しておりますので、参考にして下さい。
また、強い膝を作る事も重要なことであり、膝の筋肉の強化も必要です。それについての有効性の研究結果も出ています。(文献3)その運動もここに示しますので参考にしてください。(図3)
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- 仰向けになって横になります。
- 片方の足は膝を立てて、片方は伸ばします
- 伸ばした方の足をまっすぐに上に上げますが、
このときの約束事として、
*1足首を上に上げること、
*2足を高く上げすぎない(45度まで)
- 足を下ろすときはゆっくりと下ろす
- 回数は朝、昼、夜、それぞれ20回を2回づつ程度
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当院では老化による膝の痛み(変形性膝関節症)について@痛みのコントロール、A痛みに対する患者さんの理解度を高める、B患者さんの積極的なダイエットとC膝の運動をお勧めするようにしています。しかし、患者さんによっては可能なものやそうでないものがあります。例えば、「ダイエットは嫌だ食べたいものを食べずに痩せて、膝の痛みがとれても意味がない」と考える方もいらっしゃいます。また、「家で運動なんてできない、そんな時間はない」と考えられる患者さんもいらっしゃいます。ものの価値観は個人により違ってきますので、そのところにつきましては、私は言及できませんが、患者さんができるだけ治療に取り組む事ができる範囲で理想的な治療を行ないたいと思います。以上のような観点から当院は誰にでもすぐに効果の現れやすい電気治療、マッサージ、鍼治療を中心に治療を行なっていきます。
参考文献
(文献1) 変形性膝関節症の発症及び悪化因子への対応:
臨床整形外科35巻3号・117~123・2000年
(文献2) 肥満と変形性膝関節症の諸症状との関連性について:
整形外科49巻6号・621~626・1998年
(文献3) 変形性膝関節症に対する運動療法の効果−とくにSLRについて−:
臨床スポーツ医学Vol.17 No.2・2000年
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