

私がこの職業に携わって13年、(治療家としましてはまだまだ駆け出しではありますが)この間にたくさんの患者さんに接してきました。その経験の中から、患者さんが痛みから解放されるに当たってお願いしたいことや知っておいて頂きたいことがあります。少し難しいかもしれませんが、読んでみてください。そして、分からないことや疑問に思う事がありましたらメールにて質問を受け付けます。

痛みは健康を気にかける人にとっては一番の関心ごとでしょう。特に慢性の痛みとしての腰痛や肩こり、膝の痛み、肩関節の痛み、頭痛などを患っている方は雨が降ると痛くなるとか、冷えると痛い、温めると痛いなど、自分の痛みをいろいろ分析します。
確かに医学的にある状況下におかれると強くなる痛みもあります。例えば、足関節の捻挫をして、赤く腫れ上がり、熱もあり、体重をかけたり、歩くと痛いような時にお風呂でゆっくり温もることは痛みを悪化させるでしょう。
このように実際痛みが強くなる状況下におかれて痛みを訴える方もいらっしゃいます。しかし、痛みを気にして自分なりに痛みが強くなる原因を分析している方のほとんどは、ただ単なる印象や人から聞いた話、噂話などによるところが多いようです。
実は雨が降っても痛くはないのに、「雨が降るといたみが出てくる!」と噂に聞いたりするとそのような気になってしまうことがあります。このような痛みは、医学的にも痛みの原因がはっきりしない痛みか、老化が基盤にあるために起こる痛みで、我慢できないほど痛いという痛みよりも普段は痛くないが雨が降ると気になってくるというよな、微妙な痛みに多いようです。
皆さんの関心の的である痛みや健康についてのお話はいろんな立場の人がいろんな情報を元に、いろんな目的で行っています。(表1)
(表1)
| 立場 |
情報源 |
目的 |
信憑性 |
医科大学教授
研究機関研究員
医師 |
研究機関の研究結果
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世間一般に向けての研究結果の報告
マスコミを介しての
疾病予防の啓蒙 |
高い |
| 人生経験豊かな老人 物知りの知人 |
言い伝え、
自分の経験
人づての話 |
日常会話として
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低い |
健康用品、
健康食品販売員
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販売者独自の研究
販売者独自の理論 |
商品販売
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?質の高い研究が少ないのでうそか本当か分からない事が多い |
民間治療師
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言い伝えや経験
東洋思想 |
治療のための説明
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? |
これらの情報全てが正しいというわけでもありませんし、全てが自分に当てはまるとういものでもありません。
医学的知識に乏しい一般の方々が玉石混交の情報をひとまとめにして、だんごになり絡まった情報は元の内容とは全く違った情報になっていることもあります。こうして痛みについての間違った知識や噂が蔓延し、なお痛みを複雑なものにしているようです。例えば表2に示すような例がよく見受けられます。
(表2)痛みの軽減を妨げると考えられるちまたの情報
具体例
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私の考え |
膝に水が溜まっても水を抜いてはいけない。
抜くと癖になる。
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多少溜まっている程度なら抜く必要はないが、たくさん溜まっていて、その事自体が痛みの原因になっていれば水を抜くことですぐに痛みが小さくなる。炎症が残っていればいくら抜いてもまた水は溜まるがそれは癖になっているからではない。 |
膝が痛いのは運動不足が原因なので、
痛い時でもよく歩いた方が良い。
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痛い時は無理をして歩かずに安静を保つ方が良い。 |
肩の上のコリコリと触れる硬いものがなくならない限り肩こりは楽にならない。
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コリコリは肩がこった時に出てくるものではなく、肩こりを感じない時にも存在する正常組織である。 |
腰が痛いのは骨盤や腰の骨がズレているからである。
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実際にズレていることが原因で腰痛がおこっているかどうか証明のしようがない。
治療のための学問としては、科学的でもっとも信憑性が高いと考えられる整形外科学でも特殊なズレを除いては通常は小さなズレを問題とはしない。 |
| 足つぼマッサージを受けて、胆のうのつぼを押されて痛く感じたので胆のうの病気かもしれないといわれた。 |
科学的な根拠があるのかどうかわからない。 |
大切な事はどの情報が正しいのか、どの情報が自分の痛みに対応した情報なのか、医学的にはどの程度まで信頼できるのかなど、その情報を吟味する事だと思います。
このことを怠り、ちまたの噂話や誤った情報、隣人の経験談に翻弄されてしまうと、自分の痛みは、「放っておくと手術が必要になるのではないか?」とか、「内臓が悪くって腰がいたいのではないか?」、「死ぬまで治らないのではないか?」などの不安がたくさん出てきます。この不安も痛みを大きくする働きがありますのでとても重要な要素です。また、不安の訴え方はたくさんありますので表3を参照して下さい。
患者さんによくある不安の訴え方(表3)
具体例
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私の考え |
右の膝、右の腰、右の肩が痛い。
右ばかりが痛いので半身麻痺になるのではないか?
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関節の痛みが原因で麻痺がおきることは通常考えられないので偶然の症状である |
背中をまっすぐ伸ばして歩かないと背中が曲がってくる。
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街中で背中が曲がった高齢者の女性を見かけるが、そのほとんどは骨粗しょう症による圧迫骨折の結果と考えられる。 |
肩こりを放っておくと脳卒中になる。
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肩こりが原因で脳卒中になることはないが、今までに感じたことのない頭痛や後頭部から頸にかけての痛みが脳卒中の前触れであることがある。 |
このような不安は健康に敏感になってくる初老の方に多いようです。
痛みについて直接的に不安を感じたことのない方もいらっしゃると思いますが、そういう方も、「なんでこんなにいたいの?」とか、「この痛みいったいどうなってんの?どうなるの?」など、つい考えてしまうものです。このように、疼痛行動(痛いからお医者さんに行く、薬を飲む、第三者に痛みを訴えるなどの行動)を起こす程度の痛みを持っている人は無意識下で自分の痛みに不安を持っていたり、痛みに対しての説明による納得を求めるものです。
不安については慢性疼痛と深く関係することがよくいわれています。慢性の痛みを持っている人はうつ傾向にあることが多く、うつ状態の人は慢性疼痛を患っている場合が多いという報告があります。慢性疼痛がうつを引き起こすのか、うつが慢性疼痛を引き起こすのかはよく分かっていないそうですが、そのうつ状態の症状のひとつとして不安が挙げられるのです。
私が感じたのは、慢性の痛みに対しては、たとえ大学病院の高名な大先生が最新の治療を患者さんに施したとしても、患者さんの不安や疑問の解決や納得を得ることができない限り、患者さんの痛みはなくならないということです。逆に、医学的根拠に乏しい昔からの言い伝えのような民間療法でも痛みを持った人が治療者と信頼関係のもとに納得をして治療を受けた場合は痛みが取れたりするものです。
このように痛みを取るに当たって治療の内容ももちろん重要な要素ですが、自分の症状についてしっかりとした知識をつけて痛みに納得することが重要だと思います。
上記のお話は主に慢性の痛みについての記述です。
急性の痛みについても同じ事がいえると思いますが、慢性の痛みよりも痛みの原因に対する治療や指導がもっと重要なってきます。
さて、この文章の表題は「お願いしたいこと」でした。では何をお願いしたいかと申しますと、上記の理由で、正しい情報を身につけることが必要であり、不安や疑問は解決され、納得されなければいけないのですが、解決するにしても納得するにしても患者さん御自身が「知りたい!」「疑問を解決したい!」「こんな不安があるので解消してくれ!」という意欲がないと解決できないのです。ですから、そのような積極的な意思を持っていただきたいのです。私がお願いしたいのはこの事です。

1) 痛みをもっている方は、自分の痛みが強くなる原因について誤解をしている事が多く、そのことが痛みを複雑にする傾向があるようです。
2) 誤解は正確でない情報から得ることになるので、自分が関心のある情報はどの程度の 信憑性 があるのか、自分に合った情報なのかと、検討する習慣が必要と考えます。
3) 痛みや症状についての疑問や納得を積極的に求め、正しい情報を前向きに受け止めましょう。
4) 正しい情報により、自分の痛みや症状に対する不安を解消しましょう。

皆さんに正しい情報を身につけて頂きたいということですが、では私がここに書いている事は正しいのでしょうか?
そこまで疑問を持っていただければ私としては嬉しく思います。
私は、なるべく科学的科学的根拠にもとづいて患者さんに情報を提供しようと努力しています。しかし、患者さんの質問の中には医学や科学ではまだわかっていないことや、私の知識では足りないこともあります。それらは私の経験や、高名な先生の意見を参考にしてお話するようにしています。
あとは信用する、しないは皆さんに決めていただくことです。
私としましては、「この先生が言っているのだから信憑性はたかいのではないかな」とおもわれるように日々の精進を心がける次第であります。
これらの痛みに対する心構えをお伝えした上で今後、膝の痛みや腰痛、肩こり、スポーツ障害やダイエット、などについての私の考えを述べて行きたいと思いますので今後ともよろしくお願いいたします。
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