小川鍼灸整骨院
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肩こり 大阪
大阪府 大阪市 平野区加美北1-7-19 TEL:06-6755-6751
[小川鍼灸整骨院]
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コラム

肩こりについて

この記述を読んで頂くにあたってお願いがあります。この記述の途中までの解釈では誤解を招くことがあるかもしれませんのでどうぞ最後までお読み下さい。わからないことがありましたら掲示板やメールで受付いたします。

はじめに  
肩こりについて悩んでいる方は沢山いらっしゃると思います。「肩こりが出ると頭痛がするし、歯がういてくる」とか「何もしていないのに肩が凝る」とか、「利き腕は右なのに左ばかりが凝る」など、肩こりに関する症状や感じ方などは本当に人それぞれです。そして予防方法や治療方法もいろいろな立場の人がいろいろな情報を流しています。肩こりにつきましては慢性腰痛と同様に医学的に分かっていない(説明がつかない)ことが多く、よって予防方法や治療方法も決定的なものはありません。これといった正解がないために間違いもないのでしょう。この事が肩こりについて多くの情報が流布する原因となっています。
要はご自身が楽に感じる治療方法が一番なわけです。しかし私は、どうせ治療をうけるなら医学的観点から分かっている医学的事実をしっかり踏まえて治療を行い、それでもよくならないものに対しては体に害がなく、患者さんが心地よく感じることならなんでもいいのではないかと考えます。このような考えを元により効果的に肩こりを軽減させるために重要なことがあります。それは、1、肩こりとは一体どういうものかをはっきりさせる事 2、肩こりの原因にはどのようなことが考えられるのかを患者さん自身にも理解してもらい、自分の肩こりの原因が何であるかを分析する事 3、 1、2のことを踏まえた上で治療の意義を理解し、治療効果を高める事です。これらについてお話したいと思います。

1、肩こりとは一体どういうものか?
「肩こりって何のこと?」「どういう状態を肩こりっていうの?」というような質問を患者さんからよく受けます。肩こりとは一体どういうものなのでしょうか?
肩こりは頸から肩周り、背中の筋肉が重だるく感じる症状のことです。肩というのは本来、肩関節のことをいうのですが、一般には頸の付け根から腕の付け根の張り出した部分をいうのでしょう。この部分の筋肉は重い頭を重力に逆らって支えたり、重い上肢(肩関節から下、指の先まで)をぶらさげたり、重い上肢を動かしたりするためものです。これらの筋肉が疲れるとそのだるさが肩こりとして感じます。(図 1)


(図 1)重い頭を支える頸 (肩周りの筋肉は頭を支え、腕をぶらさげる)
頭の重さは体重の約13%です。
70kgの体重であれば頭の重さは約9kgに及びます。
この写真の頭蓋骨は2sの鉄アレイ2個を乗せられていますが苦痛に表情が歪んでいます。私たちは頭を支える事を当たり前と考えますが、力学的には重力に逆らって重量物を支えておくということは相当な仕事量が必要でしょう。私たちはそれらを無意識に行っており、肩こりを感じたときがまさにその偉業に気付くべき時なのではないでしょうか。

肩こりは直立して生活する人間にとって腰痛と同様、宿命的なものだとよく言われます。その意見に各専門家は賛成したり、反対したりしていますが、それらが正しいのか間違っているのか、明確にはできません。なぜなら、どちらにも科学的な根拠となるようなデータがないからです。いわば、その両方とも仮説であるわけです。私の意見としましてはやはり構造上直立する人間にとって肩こりは宿命的だと思います。その根拠と考えられることは肩甲骨にあります。肩甲骨は上腕骨と肩関節を形成して、腕を体にぶらさげます。(図 2)では、その肩甲骨は体とどのようにくっついているのでしょうか?図を見ていただくと分かりますが、肩甲骨と体とは重みを支えるような骨同士の関節はなく、ほとんど筋肉によって体にくっついています。唯一肩甲骨が体と関節を作るのは鎖骨を介して肩鎖関節、胸鎖関節という関節があります。しかし、ぶらさがっている重みはやはり筋肉の方がはるかに負担しているでしょう。そして、普段の生活でも知らないうちに肩周りの筋肉に負担がかかっているのですが、その負担が特殊な生活背景によってよけいにきつくなったり、ストレスによって過剰な筋肉の緊張が続いたり、なんらかの疾患による痛みが引き金になって筋肉の緊張がきつくなることもあるのでしょう。一過性の肩こりとして症状を感じる方もいますが、それらの状態が慢性化したものが皆さんが苦しむ肩こりです。

(図 2)肩甲骨が腕をぶらさげ、肩甲骨を体につなぎとめるのは筋肉(よくこる部分)です。
後ろから見た肩甲骨
写真では肩甲骨がビスで止まっているが
実際は筋肉によりぶらさがる
肩甲骨に付く筋肉
これらの筋肉が肩甲骨をぶらさげる
斜め後ろから見た肩甲骨
肩関節は肩甲骨と上腕骨から成り、
腕は肩甲骨にぶらさがることがわかる
正面からみた肩甲骨
肩甲骨は鎖骨とつながるが、
腕の重さを十分に負担はしない

患者さんがよく訴える肩こりの症状について特徴的なものをあげます。(図 3)(表 1)それと、何かの病気の症状として肩こりが出てくる場合(表 2)もありますのでここで挙げてみたいと思います。


(図 3)よくこる部分
1背中(肩甲骨の内側=けんびき)がよくこる
2腕の付け根がこってたまらない
3肩の上から頸にかけてよくこる
4頸と頭の付け根がよくこる
5これら全ての部分がよくこる

(表 1)患者さんのよくある訴え
訴え 考えられるわけ
目を使うと肩がこる 目を酷使すると肩こりを訴える方が多くいます。視力が少ない方やメガネの度が合っていない方にも肩こりを訴える方が多いようです。この原因につきましてはあまりよく分かりませんが目の疲れと肩こりは歯の痛みと肩こりと同様に密接な関係があるようです。また、よくこる部分は図 3の中の4、頸と頭の付け根であり、同時に頭痛を訴える方もいます。
連続作業の後に
よく肩がこる
連続単調作業は常に肩周りの筋肉が緊張している状態になります。
筋緊張が持続すると筋肉は痛みやだるさを持つようになります。これが肩がこった状態です。
片方だけがよくこる 片方だけがこる理由につきましてははっきりした答えはありません。よくわからないのでしょう。
肩がこると頭痛がする 肩こりが原因の頭痛を筋緊張型頭痛といいます。この頭痛は後頭部に始まる事が多く、後頭部には肩からの多くの筋肉が付着します。この付着部分は腱といい多くの神経が分布します。血液が足りない阻血状態になると痛みを発生しやすい腱は筋緊張型頭痛の引き金になり、そこから頭の各部に痛みを感じるようになりそうです。
肩がこると
歯がういた感じになる
これについてもそのメカニズムはよく分かっていません。肩がこると歯が浮いたような感じがするとか、虫歯が痛んで肩がこるという訴えを持つ患者さんは多いようです。歯の痛みが先か肩こりが先かはよく分かりませんが歯の痛みと肩こりは密接な関係があるようです。このような肩こりを解消すると歯の痛み(虫歯がない場合の)がなくなったり、虫歯を治療すると肩こりがなくなったりする患者さんを何人も経験したことがあります。
首が回らない これについてもよくわかりませんが、筋肉が過度に緊張した結果、頸の回旋が障害されるのでしょうか?頚椎の関節が悪くなっていると断言はできません。マッサージなどで筋肉の緊張が軽くなると首を回すときの痛みが楽になるという患者さんによく遭遇します。
首から肩関節や腕まで痛みが出る 脳から腕へ行く神経は頚椎(けいつい=くびの骨)を通っていきます。老化によって頚椎が悪くなると腕に行く神経が頚椎を通る部分でなんらかの障害が起こり、首から肩、腕の方まで痛みがでます。その痛みは首が悪いために出る痛みであり、腕や肩関節が悪いわけではありません。

(表 2)見極めが必要な疾患
診療科目 疾患名
内科的疾患 狭心症、高血圧、肝胆膵を含むほとんどの消化器疾患、自律神経失調症など
産婦人科疾患 更年期障害など女性ホルモンの減少などに伴うもの
精神科疾患 うつ状態、精神分裂病の緊張型、神経症など
眼科的疾患 眼精疲労を生じる様々な疾患
脳神経外科的疾患 脳腫瘍、慢性硬膜下血腫など
歯科口腔外科 咬合不全(かみ合わせ)など

上記のような疾患を持つ方は専門医に相談し、それらの疾患の治療をしながら、肩こり対策を平行して行う必要があります。


肩こりは目にみえないもの(私の肩こりに対する意見)

肩こりは目に見えないものであり、患者さん自信が感じるものです。しかし、人は何か見えないものをそのまま理解することは苦手のようでして、形として捕らえたいと思ってしまうのでしょう。、それが「肩が凝ると肩の筋肉が硬くなる」とか「肩にこりこりがある」と表現する原因であると思います。
私の主観ではありますが、目にみえない神様の存在を分かりやすくするために十字架や仏像を祭壇に祭ることと同じことでしょう。沢山の肩こりの患者さんをいままで診てきましたが、肩が凝っている人は必ず肩が硬いかというとそうでもありません。柔らかいのに肩が凝ると訴える人もいます。肩が凝っている時はその人の肩は普段よりは多少硬くなっているかもしれませんが、明らかにきんきんに硬くなる事はなく、また硬い筋肉が柔らかくならないと肩こりがなくならないかというとそうでもありません。また、肩が凝った時に肩にコリコリしたものを触れると訴える方もいらしゃいますが、これは正常な組織であり、肩こりがないときにもきっと肩に存在しているでしょう。ただ、こりがない時には気にならないだけだと思います。このように肩こりは感覚のものですので、肩の筋肉が硬くても辛く感じなければあまり気にしない方がよいでしょう。


肩こりとはどういうものかということを専門家が定義として表していますので肩こりの定義を参考にしてください。(表 3)

(表 3)肩こりの定義
肩こりの定義

整形外科辞典(南江堂)
原因を問わず、僧帽筋を中心とした肩甲帯筋群のうっ血、浮腫により生じた同部のこり、はり、こわばり、重圧感、痛みなどを総称する。

これらのように肩こりとは、肩のこった感覚であることは分かっていただけたと思います。

2、肩こりの原因

肩こりの原因にはどのようなものがあるのでしょうか。先の話のように人は直立をしているため肩がこりやすい構造をしています。そこに人それぞれの原因が加わり、肩こりが起きるのです。それらの原因は (1)構造上の異常が原因として考えられるものと (2)生活背景が原因として考えられるものに分けられます。そしてそれら2つの原因が (3)筋肉部分に痛みの悪循環をもたらす と考えられます。「考えられるもの」という表現をするのはあくまでも考えられるというだけで絶対的なものではないためです。

(1)構造上の異常が原因として考えられるもの
構造上の異常とは頸や肩周りに肩こりの原因と考えられる解剖学的な変化(実際にメスで切って開けてみるとその部分が正常な人と比べてみて異常である状態または老化による変形がある状態)の事です。このような変化ががあると考えられる根拠が症状や検査に現れると「それが原因ではないか」となるわけです。しかし、これらの検査や症状からの原因の予測はあくまでも予測であり、100発100中ではありません。このことは肩こりが「分かりにくく、ややこしいもの」「曖昧なもの」ととらえられ、実態が把握しにくい大きな理由の一つです。構造上の原因として考えられる具体的なものを挙げます。(表 4)

(表 4)具体的な構造上の原因
猫背 背中のカーブは元々すこし後ろに曲がっています。このカーブが大きい人を猫背というのでしょう一般には肩こりの原因は猫背とよく言われますが、猫背は病的なものではありませんし、猫背の人100人がすべて肩こりかというとそれは疑問です。そのような報告もありません。ですから、厳密には猫背が肩こりの原因になるかどうかも不明なのです。
骨粗しょう症による圧迫骨折後の後湾変形 背中が極端に曲がったお年寄りを見る事がありますが、そのような方の背中が後湾変形です。骨粗しょう症による圧迫骨折が原因になりますので、その多くは女性です。背中が曲がると前を向くためには首を持ち上げなければいけません。常に首を持ち上げるために過度の筋肉の緊張が起こり肩がこるのでしょう。
変形性脊椎症
(頚椎症、脊髄症)
中年以降の肩こりの構造上の原因としてはこれが一番多く考えられるかもしれません。頚椎(首の骨)や椎間板(首の骨と骨の間にある軟骨)が老化によって傷んでくる(変性)することによって肩のこりが出てきます。このような人が整形外科などでレントゲンをとると、「軟骨が減っている」という指摘を受けるでしょう。
胸郭出口症候群 胸郭というのは首の下から胸の部分、腕の付け根のことです。腕に行く神経は頚椎を出た後、胸郭という部分を通って腕に向かいますが、その胸郭の部分で神経が圧迫を受けて肩こりや手のしびれが出てくる事があります。
肩関節疾患
(五十肩、肩板炎、動揺肩、など)
肩関節に痛みがあれば、その痛みのために肩周りの筋肉は異常な緊張をします。このことが肩こりにつながるのでしょう。普段あまり肩こりを感じない人が肩関節を痛めたことで肩こりを感じるようになった場合は、その肩の痛みがなくなれば肩こりも速やかになくなることが多いでしょう。
頚椎捻挫
(外傷、鞭打ち損傷など)
交通事故などによる鞭打ち損傷後に肩こりを感じる人は沢山います。これらの中には鞭打ちにより本当に肩こりや頭痛、めまいで苦しむ人と、事故の影響はとっくになくなって、自然に肩こりがやってきたのに過去の事故が原因と思い込んでいる人がいるようです。しかし、今現在の肩こりが、自然に起こったものか、過去の事故が原因かを証明することは困難であり、事故が古くなればなるほどその証明も困難となるでしょう。過去の事故が肩こりの原因と思い込んでいる場合はそれが事実であろうとなかろうと取り除く事が出来ない原因になることが多いようです。(心理的原因?)

(2)生活背景が原因として考えられるもの
生活背景が肩こりの原因と考えられるという科学的根拠はこれといってないのですが、同じような作業や動作を行っている人に同様の症状を現す人が多いことから、経験的に生活背景の何かが肩こりの一原因と分かるようになったといってもいいでしょう。その分かった事を後から科学的に考えると、妥当な解釈が見えてきたというものです。では具体的な生活背景の原因とそれに対する妥当な見解をいくつか挙げてみたいと思います。(表 5)

(表 5)生活背景の原因とそれに対する妥当な見解
精神的ストレス 精神的ストレスがたまってくると自律神経の交感神経という神経が過剰に働くようになります。交感神経は筋肉を緊張させたり、血管を収縮させる働きがありますので肩こりを引き起こす原因となります。その他、ストレスは免疫系やホルモン系にいろいろな影響を与える事が科学的にわかっています。
連続単調作業 連続単調作業は常に肩周りの筋肉を緊張させます。筋肉の持続的な緊張は肩こりの大きな原因の1つです。
不良姿勢 不良姿勢も猫背と同様あやふやな表現です。しかし、仕事や作業内容で明らかに普段行わない姿勢を強いられた時などに筋肉の痛みを感じる事があるでしょう。それが、肩にきた場合は不良姿勢が原因の肩こりと言えるでしょう。
生活習慣 例えば生活のリズム(就寝時間や起床時間、睡眠時間)がばらばらで不規則な生活をしているとストレスに弱い体になっていたり疲れやすくなったするものです。そのような時は不定愁訴といって、検査には出てこない体の異常がよく現れます。肩こりは不定愁訴の中でも代表的な症状です。

これらの原因は単独に存在することはほとんどなく、構造上の原因と生活背景の原因を併せ持っていることがほとんどであり、その組み合わせもまたひとそれぞれです。(図 5)このことも肩こりの実態が把握しにくい理由の1つでしょう。そして、これら生活背景にある原因は治療によって取り除けるものではなく、患者さんご自身の取り除く努力が必要になります。

(3)筋肉部分の痛みの悪循環
上のふたつの原因が筋肉部分のこりや痛みにどのように関係してくるのかを図で示します。(図 4)
治療によって症状が軽くなるのは筋肉の部分の痛みの悪循環を断ち切るためです。しかし、この部分だけの治療を行っても残っている原因の改善が行われなければ時間の経過とともにまた肩こりもやってくるでしょう。マッサージや電気治療、針治療などの筋肉に対する治療(対症療法といいます)のみではその場しのぎと言わざるを得ません。

(図 4)筋肉部分の痛みの悪循環
肩こりは筋肉の持続的な緊張(収縮)が原因と考えられます。筋肉の収縮は筋肉の毛細血管も収縮させます。そうなると血行不良が生じて筋肉に血液が足りない状態となるのです。(阻血状態)血液が足りないと痛みを感じるようになります。この痛みがまた筋肉の緊張を引き起こします。また、阻血状態では筋肉の活動の結果に生じた老廃物(代謝産物)が化学的に神経を刺激して痛みが生じます。これも筋肉の緊張を引き起こします。この部分の悪循環はマッサージや鍼治療、電気治療、温熱療法で断ち切る事が出来ますが、構造上の異常や生活背景の原因が改善されない限りにはそれらの原因がまた筋肉の緊張を引き起こし、悪循環を継続させるでしょう。

以上のように肩こりに関しましては、経験や医学の発達により理論的に分かってきた事、(分かってきたと考えられる事)が多くなってきています。では、これらの理論(理屈)を元に患者さんを治療して、100人中何人の方が根本的に肩こりから解放されるのでしょうか?その数はかなり少ないでしょう。肩こりの原因については分かってきた事はありますが、それらはあくまでも理論上であり、実際の患者さんにあてはめて治療をしても極めて有効な場合のほうが少ないのです。万人に有効な根本的治療法は今のところないと言わざるを得ません。言い換えると肩こり治療にかんしてはスタンダード(基準)となる治療法はなくオーダーメイド(人それぞれ)の治療でなくてはなりません。

万人に有効な根本的治療法がないわけ

なぜ、根本的治療法がないのかを述べたいと思います。コリは感覚であり、その感じ方は人それぞれで違います。1つの全く同じ肩こりの原因をそれぞれに持ったAさんとBさんが肩こりを感じる度合いを比較したとしてもAさんとBさんは全く同じ肩こりを訴えないでしょう。これはAさんとBさんは同一人物ではないからです。痛みや感覚の感じ方は、その人の育った環境や今現在の状況、過去の体験などにより人それぞれに大きく変ってきます。同じ原因をもっていても同じ症状を訴えないとなれば、学問的に分析する事が難しくなります。分かりやすく言うと、1+1=2は1が1であるから2が規則的に導き出されるのであって、見た目は1でもその中身は3であったり4であったりすると、その答えも規則的にはなりません。ましてや上記のAさんBさんの話は原因と考えれれるもの1つについての話ですが、肩こりを患う人のほとんどは1つだけの原因によるものではなく、多くの原因を同時に持っています。(図 5)

(図 5)多くの原因よりなる肩こりの模式図
肩こりの原因Aの感じ方は人によって違います。それは他の全ての原因についても同じです。また、持っている肩こりの組み合わせも人それぞれです。多くの肩こりの原因が重なり合って肩こりが形成されます。できるだけこれらの原因を取り除くことで肩こりが少しでも楽になるのです。

そうなれば、いくらかある原因それぞれの影響は人それぞれに違った感じ方をするので分析は一段とややこしくなり、学問的にひとまとめにすることは極めて困難となります。だから学問的に洗練された根本的治療法がないのです。
ここで私が言いたいのは、肩や頸、背中の骨格や筋肉の構造から理論的に原因として考えられることはあるのですが、それらは全ての人には当てはまらないということです。なぜなら感覚や感じ方は人それぞれだからです。
決定的な治療法がないもうひとつのわけは、肩こりの原因には職業や生活背景、性格など取り除けない原因や改善できない原因があるからです。

3、 1、2のことを踏まえた上で治療の意義を理解し、治療効果を高める

以上のことより、一応の肩こりの原因は分かっていますが、それらは絶対的なものではなく一様なものでもありません。人それぞれにいろいろな原因が絡み合っています。(図 5)そういう事実を分かってください。そうすることで、ちまたに流布する健康情報(表 6)をいちいち気になることは少なくなるでしょう。それらに神経質になる人ほど肩こりも感じやすいようです。

(表 6)ちまたに流布する肩こりの情報
肩こりの原因と考えられがちなこと 私の意見
肩こりの原因は
枕が合わないことにある
以前は肩こりがなかったのに、枕をかえたことで肩こりがきつくなったのなら枕が原因と考えられるでしょう。しかし、いつからこっているか定かではない肩こりの原因を以前から使っている枕のせいにすることは必ずしも正解ではないと思います。現に原因を枕に求めて新しい枕を購入して肩こりから開放された人は少ないでしょう。
肩こりの原因は運動不足である 一部の人はそうかもしれませんが全ての肩こりの原因とは考えられません。
水泳は肩こり解消に
もっともよい運動である
ちまたではよく言われますが、水泳をしてよけいに肩がこる人もいるでしょうし変化のない人もいますのでこれも万能ではありません。
猫背の人は肩こりになる これも猫背の全ての人にあてはまるものではないでしょうが、頸か肩に負担がかかりやすいかもしれません。猫背はどうにもなりませんのでなんとしても矯正しようと考えるよりもこれぐらいの認識がよいと思います。

では肩こりを真剣に治したいと思っている人はどのようにすればいいのでしょうか?
大切な事は、自分の肩こりの原因のどれが取り除けるものでどれが取り除けないものをはっきりさせる事です。(表 7)

(表 7)
原因 取り除く事が難しい原因 取り除く事が可能な原因
構造上の異常が原因と考えられるもの 猫背などの生まれつきの体型や老化が基盤にある変形は残念ながら改善しない。
病気などがあるのであれば、
その原因となる病気が治れば肩こりもなくなるかもしれない。
生活背景が原因と考えられるもの パソコンを使用するときの椅子の位置
長時間の連続作業の中断
ストレッチの習慣化
ストレス解消
仕事それ自体が肩こりの原因となるもの(転職や退職はたやすくできない)
性格(ストレスの溜まりやすい性格はたやすく修正できない)
これら改善できるものと困難なものには生活環境や仕事内容などが影響するために個人差が大きい
筋肉部分の痛みの悪循環
  治療により改善できることが多い

まず自分の肩こりについて、原因と考えられることをしっかり推測します。そして、それらの原因を取り除けるもの、そうでないものを振り分けます。取り除けないものを取り除くことは無理があります。無理な事を何とかしようと考えて、どうにもならないで気に病んでばかりいるよりもできることから確実に行って、今現在の肩こりを少しでも小さくしていくことが肩こり治療の大事なところだと思います。そしてどうしても取り除く事が出来ない原因の存在をできるだけ明らかし、取り除く事ができない事に納得する事ができれば、その肩こりも我慢ができる程度のものになると思います。
痛みや肩こりの感覚は肩や背中、頸で感じるものではなく頭で感じるものなのです。脳が痛みやコリ、違和感を感じるのですからその感受性はご自身で調節することがある程度可能です。その調節とは痛みやコリに対して理解を深めて納得をすることだと思います。


imgimgテレビの番組で箱の中に何が入っているのかを手で触って当てるクイズをよく見ます。箱の中には果物が入っていたり、ときには蛇などの爬虫類が入っていたりします。何が入っているか分からない箱の中に手を突っ込むことは誰でも不安なことであり、警戒心を強めてしまいます。中に何が入っているのかを前もって分かる事ができればよけいな心配をせずに入っている物に対応することができるでしょう。肩こりをはじめとする体の不調は患者さんにとってはまさしく「箱の中の物」であるわけです。箱の中に何が入っているのか分かることが「納得する事」であると思います。そうなると箱の中に爬虫類がいたとして、ヌルっとした感覚があっても爬虫類がいてるから当たり前と考えるでしょう。(もちろんもともと苦手な人もいるでしょいけど)爬虫類がいると知らないで、ヌルっと感じるのと知っていてヌルっと感じるのではその不快感は後者のほうがはるかに小さいと思います。

このように考えていくと、肩こりは専門家に治してもらうというよりも専門家に意見を聞きいて肩こりの原因を取り除く努力をご自身が行い、それでも続く頑固な肩こりは筋肉部分の痛みの悪循環に対する治療(対症療法=マッサージ、鍼治療、電気治療、温熱療法、薬物療法など)を行って肩こりを楽に感じるようにするという方法が最善の治療方法と言えます。

最後に

ここに記載されたことを実践しようとすれば専門家の意見が必要となります。ここでの専門家とはいったいどういう人のことをいうのでしょうか?この手の症状を扱う専門家は沢山います。医師であっても内科、外科、整形外科、循環器科などいろいろな科目を専門とする先生がいますし、先生個人の興味も影響していろいろな解釈の先生がいます。それらの先生方に一人の患者さんが同じ質問をしても全く同じ答えはかえってこないでしょう。命にかかわるようなことでも大筋は一致した意見が得られるでしょうが細部は変ってきます。(医師は「医師の裁量権」という権利をもっていますので)医師によってさえ考え方は変ってくるのですから、正解がなく、間違えもない「肩こり」について標準的な見解を得ることは難しいです。ましてや専門家は医師だけではなくマッサージ師、鍼灸師、柔道整復師、カイロプラクター、整体師など沢山います。それらの先生方は肩こりについて学んできた学問的背景(東洋医学や伝統医学、民間療法などを基礎として勉強している)が違います。だから肩こりの解釈の違いは西洋医学を共通の学問的背景とする医師同士の解釈の違いよりも医師以外の専門家同士の解釈の違いの方がはるかに大きいでしょう。このようなことも肩こりについていろいろな情報が流布する原因の1つです。

では妥当性がある標準的な意見とは何でしょうか?やはり科学的、医学的、現実的に分かった範囲で考えるしかないでしょう。そしてわからないところは、わからない事として解釈し、納得するしかないでしょう。しかし、患者さん御自身にとってはそういうわけにも行かない場合があります。肩こりが辛くてたまらない時に病院へ行って、症状が改善せず、治療者に「どうしようもない」と言われてもこの痛みやコリ感をなんとかして欲しいものです。そのような時は害にならず、経済的な面も考慮された、心地よく感じる何かで補うことが良いのではないでしょうか。その治療方法が効果を現すのならばそれは患者さんにとって最善の治療だと考えます。

そのような意味から私たちは患者さんに対するしっかりした説明と心地よく感じるマッサージを主体に治療を行い、ご自身の症状と治療内容に納得していただく事が重要だと考えます。

長くなって申し訳ありませんでした。最後までお付き合い頂き有難うございました。


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