53.医療者の言葉は患者に届く?届かない?②

2015年8月のブログです。ホームページ移設

のためにここに移動しました。

 

 

私たち治療者が苦労して身につけた理論や経験が

治療者の声として患者さんに届く(受け入れられ

る)ことがなく、テレビや隣人の助言が患者さん

に受け入れられるのはなぜでしょうか?

 

それは、その言葉が、治療者が「あてがう」言葉

ではなく、患者さん自身が「拾い上げる」言葉

だからではないでしょうか?

 

治療者が「あてがう」言葉と患者さんが

「拾い上げる」言葉。

 

この違いを表現するのは難しいですね。

読者の方に届けばよいのですが・・・・。

 

Mさんの場合、治療者があてがう言葉とは、

治療者である私がMさんの辛さがいつ終わるのか

について、理論的な観点を元に発した言葉です。

 

 

この言葉はどこまでも外からあてがわれたもの

であるために、患者さんはその言葉を元に自分の

状況を解釈していく必要があります。

 

 

この作業は患者さんにとっては難しい作業です。

 

しかし、患者さんが主体的に拾い上げる言葉は、

患者さん自身がしっくりくるために拾い上げられ

た言葉なのです。自分がしっくりくる言葉を拾い

集めてMさんは自分が主体的に行うことができる

解釈を創り上げていきます。

 

 

これは外側からあてがわれた言葉を元に解釈する

こととは正反対の作業となります。

 

自分がしたいように解釈することになりますので

作業としては行いやすい作業となるでしょう。

 
だから患者さんの心に「ストン」とふに落ちる

のでしょうね。

 

 

というか、自分で拾い上げるから納得しやすい

のは当然のことなのでしょう。

 
患者さん自身が、原因がわからないとされる痛み

に対してふに落ちる解釈をできた時に、痛みから

解放されることが多いようです。

 
それは、科学的な信憑性とは別の次元で、

患者さん自身が主観的に納得するということ

でしょう。

 

このような、主観的な納得に基づく患者さんの

回復について文化人類学者は、原因がわからない

とされる状態から、原因がわかった!という状態

に入ることができ、宙ぶらりんの不安から解放

されるためと説明しています。

(松岡悦子著、波平恵美子編:文化人類学で扱われ

てきた宗教、系統看護学講座基礎9文化人類学、

医学書院、1993、pp.150-166)

 

では、患者さん自身が「ストン」とふに落ちる

ようにするために医療者には何ができるので

しょうか?

 
これは難しい問題です。

 

表現するにも難しい。

 

あえて表現するとすれば、
「患者さん自身が解釈したいように解釈すること

を促す」?ということになるでしょうか。

 
この場合、専門家は自分の専門性にふたをする

必要があります。私たちは専門理論も持っている

がために専門家として存在しえるのですが、

患者さんの前でその専門性をあえて表に出さない

のです。

 
それどころか、時によっては患者さんの問題に

ついて、患者さんがどう考えるのかを引出し、

その話に興味を示しながら教えてもらうという

態度を示す必要があります。

 
ここでは、治療者のほうが治療のための知識を

もっていて患者のほうにはそれがないために成立

している「患者は治療者に従う」という従来の

関係性は成立しません。

 
「患者さん自身が解釈したいように解釈すること

を促す」ために治療者はこの関係性を逆転させて

患者さんから患者さん自身が症状をどのように

捉えているのかを教えてもらう態度が必要では

ないでしょうか。

 
そうして知ることができた患者さんのお話しを

利用して患者さん自身がふに落ちる落としどころ

を見つける、そしてそこに患者さんを着地させて

あげるということが「患者さん自身が解釈したい

ように解釈することを促す」ことになると思い

ます。

 
このように、「患者さん自身が解釈したいよう

に解釈することを促す」ことは、そう簡単なこと

ではなさそうです。

 
治療者自身が単に理論を駆使して治療を行う

のではなく、時には自分の理論にふたをして患者

さんの話の流れの中に自分の身を置いてみると

いう作業が必要になると思います。

 
この作業、しっかり勉強してしまった治療者には

けっこうキツイ作業なんですよね。

 
話がここから拡散していきそうなのでこの回を

終わらすべく、強引に話を元の問いである

 

「治療者の言葉が患者に届くかどうか」

 

という問題に立ち戻りたいと思います。

 
結論として私は、

 

「患者さんは治療者が意図したとおりに治療者の

言葉を受け取ることはない」

 

と言いたいです。

 

 

この、治療者にとってネガティブで暗い答えの

かわりに私は、ポジティブで明るい提案をしたい

と思います。それは以下の通りです。

 

 
患者さんは基本的に自分が受け入れたい情報を

断片的にかき集めて、自分が解釈したいように

解釈するので、その解釈が可能な限り患者さんに

とってポジティブで最大幸福につながるように

治療者は努力する!

 
この努力の結果に患者さんの最大幸福が訪れた

とすれば、それは治療者の貢献であり、治療者の

声が患者に届くことと同じ価値があるといえる

のではないでしょうか。

 

夕焼けと鳥

 

(おわり)

小川鍼灸整骨院

南巽リハビリデイサービス たすく

アクセス

小川鍼灸整骨院

〒547-0001 大阪市平野区加美北1丁目1-11
【アクセス】大阪市営地下鉄千日前線 南巽駅から徒歩1分